北海道コンサドーレ札幌の2018シーズンが終わりました。
さらなる高みを目指して、2017シーズン100点満点の結果を残したと言える四方田監督からペトロヴィッチ監督へと交代して臨んだ2018シーズン。
一歩間違えばJ2降格もあり得た挑戦のシーズンは誰も想定していなかった大躍進のシーズンとなりました。
そんな大躍進を遂げた北海道コンサドーレ札幌の2018年を振り返ってみましょう。
シーズン初めに書いたプレビューそして前半戦の振り返りもご参考に。
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■前評判を覆す大躍進
監督が代わり、これまでとは真逆のサッカーに取り組んだ2018シーズン。
適応には時間を要すると思われ、少なくても前半戦は苦戦するのではとの大方の予想でしたし、J1 18チームで唯一開幕から3試合勝ちなしな出だしはその予想通りでしたが、そこからクラブ新記録となる11試合負けなし(7勝4分け)と戦績は上昇カーブを描き、前半戦を5位で終えました。
前半戦の振り返りでも書いたのですが、第4節を契機に今年取り組み始めたペトロヴィッチサッカーに昨年までの四方田サッカーを融合させたことが上昇カーブを描き始めた要因かなと思ってまして。
四方田サッカーというのは、サボらずしっかりハードワークすることももちろんなんですが、強みのセットプレーを大事にってのが大きかったんじゃないかなと。
セットプレーで点を取れることで際どい試合で勝ち点を拾えるって言う直接的な要因以外にもセットプレーに強みがあると攻撃時の選択肢に幅も出ますしね。
後半戦も浮き沈みこそあれ、安定した戦績を積み重ね、ACL出場権となる3位以内にはあと一歩届きませんでしたが、クラブ史上最高となる4位でフィニッシュ。
この一年の成長が実感できたのが第33節の磐田戦でしたね。
試合時点での順位の差を見せつける内容ももちろんそうなのですが、ビルドアップ時のスタイルの変化に今シーズン取り組んできたサッカーの成長が見て取れました。
札幌は攻撃のビルドアップを3バックの真ん中宮澤+ダブルボランチの3枚で行い、3バックの残り2枚進藤、福森がワイドの高い位置に構えることで攻撃に厚みを持たせているのが大きな特徴です。
この試合ではビルドアップに福森が参加する場面が多く、それによりリスクケアしている印象がありましたが、進藤はとても最終ラインの選手とは思えない位置取りなんですよねw
そういうビルドアップスタイルにより攻撃に厚みを持たせているので、セカンドボールが拾えると波状攻撃に繋がって迫力のある場面になるわけですが、こういう場面を作れるようになったのがこの一年の成長ですよね。
このスタイル、終盤戦になってよく見られるようになった形で、ボール取られると一転大ピンチになるリスキーなスタイルではあるんですが、セカンドボールが拾えると波状攻撃に繋がるという超攻撃サッカーを自称する今の札幌をよく表しているスタイルなのかなと思います。
終盤戦になってからよく見られるようになったスタイルですが、その原型は前半戦 第12節の鳥栖戦で見られてました。
ちょうどロシアW杯前の過密日程の渦中で遠く九州でのアウエー戦、そこから中二日で札幌での試合を控えているという状況下でターンオーバーで前線総入れ替えで臨んだ試合でした。
その中で先制されるという苦境を思い切った布陣変更で自ら試合を動かして勝ち切った試合でした。
失点後は明らかにギアを上げて攻勢を強めてきました。
その流れで二つの手を打つことで試合を動かそうとします。
一つ目はジュリーニョの投入に合わせての布陣変更。
3-4-2-1を4-3-3へ。
4バックは右から駒井、進藤、石川、福森で、両SBの駒井と福森は攻撃時は高い位置を保ち攻撃に厚みを持たせます。
真ん中の3枚を深井を底にして前に宮澤、兵藤が並ぶ逆トライアングル。
前線はジュリーニョを頂点にしてシャドーに早坂、宮吉が並ぶトライアングル。
最前線にテクニックのあるジュリーニョを配置したことで前で溜めが効くように。
そして驚きだったのが荒野が入ったタイミングでの攻撃時の布陣変更。
荒野が大きく両手を広げて指示していてピッチを広く使ってという指示だったのは分かったのですが、攻撃時の布陣を見てその狙いが明らかに。
荒野、宮澤が2人で最後方で、その前の兵藤も含めて3ボランチでビルドアップし、CBの2枚進藤、石川は大きくワイドに開いて攻撃参加することで、サイドに厚みを持たせています。
半ば博打的に見える戦法にも見えますが、この采配が見事に的中します。
(中略)
荒野投入のタイミングでボランチ3枚で後方からビルドアップし、4バックを全員サイド攻撃に使うと言う奇策に出てからわずか10分で同点そして逆転まで持っていきました。
この試合では途中から4バックに変更してからなので微妙には異なるのですが、4バックを全員サイド攻撃に使うとか、今思うと狂ってるとしか思えない策ですよねw
これに比べると終盤戦で使われたのは、3バックの時にリベロ以外の2人をワイドに開かせるぐらいですから、比較するとそれほどではないですね!(比較しちゃいけない)
来シーズンもこのスタイルで行くとは思いますが、個人的に感じている課題がありまして。
布陣的には3-2-5なんですが中の”2” がワイドに開いているので中央にスペースがあります。
選択肢としては、
- サイドからじっくり攻める
- ロングボールで一気に裏狙う
- シャドーが降りてきてボール受ける
の3つがあるのですが、2と3特に3が狙われやすいと思うのですが、ボールの奪いどころが比較的わかりやすいですし、後ろの人数が足りてませんから一転して大ピンチになるという大きなリスクを抱えています。
中央にスペースができてしまう課題をどうケアしていくのか、個人的には注目しています。
■この悔しさは絶対忘れてはいけない
ロシアW杯の中断明け後も安定した戦績を残していき、3連勝と上り調子にあった状況下で発生した北海道胆振東部地震。
震災後初の試合は、大きな悔しさが残る試合となりました。
立ち上がりから鬼気迫る勢いで前線からのハイプレスで次々とチャンスを作り出したのはアウエー札幌。
やっぱり震災後初の試合という気持ちの入り方がというのも当然ありますが、シャドーに本来はボランチの荒野が入ったことで、前線からの守備がいつもより機能した側面も大きいのかなと。
タラレバ話ですが、ここで1点でも取っていれば勝敗はいかようにでも転びうる試合だったかなと思いますが、一つのミスが試合の行方を決してしまいました。
(中略)
最初の流れを掴んでいれば、勝てる可能性はあったし、少なくてもここまでの大差にはならなかったと思うんですよね。
そして、立ち上がりから全開バリバリで攻めてたところに一瞬の隙を突かれて先制されたことで一気にガクッとしたところを畳み込まれたことによる大量失点。
これはペース配分の誤りも当然あるでしょうし、そこから立て直せなかったチームとしての経験値不足という側面もあるのかなと。
震災後初の試合ということで、いつもより気合が入り過ぎてしまったことによるオーバーペースそして失点して気落ちした隙を突いて畳みかけるという川崎のしたたかさ。
大差で負けたことよりも、チームとして若い面が出てしまったことや相手のしたたかさから学ぶべき点が多いと感じています。
このゲームで味わった悔しさは絶対忘れてはいけないと思うのです。
■今シーズン成長を感じた選手
2人います。
1人はチャナティップ。
元々力は持っている選手であることは誰もが認めているでしょうが、今シーズンペトロヴィッチ監督の元、ゴールへの意識が出てきたことによって怖い選手へと変貌を遂げましたね。
8得点を挙げ、J1ベストイレブンにも選ばれました。
来季はぜひとも得点王そしてMVPを目指して欲しいと思いますし、それだけの力持ってますよ!
そしてもう一人は進藤。
3バックの右として全試合フルタイム出場。
怪我がないことそして警告が少ないことの証ですよね。
ディフェンスの選手としてシーズン4ゴールは胸を張ってもいいですし、本業の守備面でも大きな成長が見られましたよね。
冗談抜きで日本代表で観てみたい選手です。
代表だとCBそしてSBでもいけそうです。
■来シーズンへ向けての期待と課題
2018シーズンの最終結果は以下の通り。
リーグ戦での4位が光る一方、ルヴァンカップでは何も残せずなグループステージ敗退と、選手層の薄さが露呈しています。
今シーズンACL出場権獲得を惜しくも逃しましたが、複数の大会で結果を残せなかった状態でしたから、結果的にはこれでよかったんだと思いますよ。
来シーズンはACL出場を見据えて、複数の大会で結果を残すこと(=選手層が厚くなること)が第一の目標となりますかね。
そして夢は大きくJ1優勝でどうでしょうか!
もう一つ、中長期的な視点で気になっているのは守備面ですね。
今シーズンは昨シーズンまでの四方田サッカーのベースがありましたが、来年以降それが少しづつ薄れていくのでは...ということを危惧しております。
ペトロヴィッチ監督がこれまで率いてきたチーム、年を追うごとに守備面の崩壊が目立ってきてますし。
北海道コンサドーレ札幌の記事は今年最後になります。
お付き合いいただきありがとうございましたm(__)m
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