ペトロビッチ体制7年目となった2024シーズン。
苦難の道のりと予測した以上の厳しい戦いを強いられ、2017年以来守り続けてきたJ1の席を手放す結果となった今シーズンを振り返ります。
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シーズン初めにしたためたプレビューもご参考に。
■2024シーズン戦績
明治安田J1リーグ:
19位(勝ち点:37、9勝19敗10分、得点:43、失点:66)
2024JリーグYBCルヴァンカップ:
プライムラウンド準々決勝敗退
天皇杯:
ラウンド16敗退
■開幕から出口が見えないトンネルに入り込む
開幕戦は3年連続の引き分け、そして2年連続のスコアレスドロー。
雪深い北海道から離れての長期キャンプからの流れでのそのままのシーズンインは例年通りではあるんですが、今年はキャンプ地の芝が合わなかったそうで、それにより怪我人が多く、仕上がりも遅れているというエクスキューズがありましたが...
今年もですか┐(´д`)┌ヤレヤレ
と、スロースターターそして年中行事になりつつある怪我人の多さ。
例年よりも選手の入れ替わりも多かったことも影響したのか、攻撃面では何一つ見せ場がなく、今年は厳しい道のりになりそうだなと感じましたが、その厳しい現実を第2節で突き付けられることに。
これはホンキで残留争いを覚悟しなければいけないか...
と第2節時点で思ってしまう内容そして結果でしたかね。
想像していたよりも厳しい現実を突きつけられてしまったように感じました。
この試合は後半早い時間に中村が2枚目のイエローカードを受けて退場になったことで一方的なスコアになってしまったこともありますが、
開幕戦でも同じ印象を抱いたのですが、内容がよくないことや負傷者が続出している状況でチーム全体に怯えというか弱気な気持ちが大きくなっているように見え、ここからチームをどう立て直していくか、ペトロヴィッチ監督の手腕が試される状況ですね。
内容に加え、ネガティブな心理状態がチーム全体に漂っているのが傍目にも見えている点がマズい状態かなと感じていました。
ここから5連敗を喫し、6試合勝ちなしと、開幕から出口の見えない長いトンネルに入り込んでしまった北海道コンサドーレ札幌。
内容自体は良かったんじゃと思いましたけどね。
今シーズンここまでは、前線での機動力だったりダイナミックなサイドチェンジなど、昨シーズンまでの札幌の良さが見られないことが低迷の原因とみていました。
昨シーズンと前線のメンツが鈴木武蔵であったり小林に代わったことで、昨シーズンレベルでの機動力が見込めず、新しい形を模索する間は苦しむだろうなとは予測していましたが、福森が抜けたとはいえ他にもできる選手がいるはずなのにダイナミックなサイドチェンジがさっぱり見られないのは何でだろうとは思ってました。
この試合では斜め方向のダイナミックなサイドチェンジが多く見られ、それがいい内容に繋がりましたが、何でここまでそれできなかったんですかあああ(*`Д´)ノ
ってのを考えると、パスの受け手あってこそなので、その辺の連携面の意思疎通が怪我人が多かったことで十分に行えなかったことが要因なのかもと感じました。
前線での機動力に関しても同じことが言えて、昨シーズンに比べると機動力に劣ると見ていた鈴木武蔵や小林を絡めてもスムーズな感じに見えたのは、連携面の意思疎通が練習を通して深まったことで、オートマティックな要素の多い今の戦術の良さが出たんじゃないかと。
5連敗とはなりましたが、トンネルの出口は遠くはないかなと内容としては光明を見い出せた一戦でした。
今シーズン7試合目での初勝利は、昨シーズンまでキャプテンを務めていたクラブのバンディエラこと宮澤のゴールによりもたらされました。
これを良いきっかけにしての巻き返しに期待しましたが...
シーズン2勝目は第14節まで持ち越されました。
■復調基調が見えたが...
第8節からは4試合連続の引き分け。
毎試合先制ゴールを奪うもリードを守れずといった試合を続け、勝ち点を落とし続けました。
第10節 湘南戦では54分まで奪った3点のリードを守り切れず。
3点差を追いつかれてしまったことは負けに等しいショッキングな結末で、同じ監督の下で長い期間戦っているチームにしては、試合の終わらせ方がさっぱり身につかないのよね...と今さらながら実感させられましたかね。
ホントにこれに尽きるんですよね。
長年そこから目を背け続けた報いを受けている印象で、リードしている場面での試合の終わらせ方の拙さで勝ち点を落とした試合でした。
これで前節に続いての連敗となり、13試合終えて1勝5分け7敗の最下位。
まだ1勝しかできていないことと、攻撃力が強みのチームにしては得点も少ない現状は厳しく、このまま降格街道まっしぐらとなりそうな雲行きになってきました。
攻めの形自体は悪くないようには思いますが、アタッキングサードから先への侵入がなかなか叶わず、それは私が見るに勝てていないことからの自信のなさがリスクを負わないプレー選択をしているように見え、それに加えて、相手に怖さを与えられるFWがいないことも影響しているように見えます。
相手に怖さを与えられるFWがいない点についてはすぐの改善は難しいですし、自信のなさも勝たないことには何ともといった状況で、これを打開できるのは変化しかないと思っていて、それは思い切った選手起用を起爆剤とするぐらいしかないと思います。
13試合を終えてわずか1勝という現実に、チームとして自信を失っていることは明らかで、内容自体は開幕戦に比べればよくなっているのに結果がついてこないのは、自信のなさがリスクを負わないプレー選択に表れて、それがゴールを自ら遠ざけているように見えてましたね。
第14節で2勝目を挙げたものの、その後は再び連敗街道。
19試合でわずか2勝と散々たる戦績でシーズンを折り返します。
試合全体を振り返ってみると、両チーム中二日というのもあるのか全体的に低調だったといえ、見せ場すら満足に作れなかった札幌のチーム状況はウノゼロの敗戦という結果以上に深刻に見えました。
一言で言えば攻守ともに精彩を欠いてという表現に集約されるんですが、もう少し具体的に言うと、攻撃も守備も組織立った動きが全くなく、特に攻撃は単発感100%でポジション被りやパスの出し手と受け手の意思疎通ができてなくボールロストするシーンばかりが目立ち、まぐれ以外では点取れないんじゃぐらいの絶望感を抱いてしまいました。
7連敗となった結果以上に深刻なチーム状態で、ここからの盛り返すイメージが見えませんでしたね。
怪我人が多くて...というエクスキューズは理解できなくもないですが、それはここ数年ずっとそうだったわけで、それを改善できなかったチームの問題だと思うんです。
これは選手、監督というよりもフロントの責任ですよね。
加えて、チームの主軸に成長した若手の移籍に加えて、中堅クラスがベテランの域に達して、怪我がちになり走れなくなったことで、マンツーマンディフェンスの強度を落とさざるを得なくなったことも大きいと思ってまして。
強度が落ちたことで対戦相手としてはやりやすくなったこと、それは当然なんですが、新加入選手がどのレベルで行えばよいかの迷いがあるんじゃないかなと思っておりまして。
それがフィットに時間がかかっている理由なんじゃないかと感じています。
常に怪我人が多いという課題を改善できなかったことに加え、主軸を担ってきた中堅クラスがベテランの域に達して走れなくなったことでマンツーマンディフェンスの強度を落とさざるを得なく、それにより本来のサッカーにぶれが出て新加入選手のフィットに時間が掛かっていることが今シーズンの低迷に繋がっているように感じましたね。
■反攻
一方の札幌でしたが、残留争いにも加われていない立ち位置で言えるセリフではないのは百も承知ですが、内容的には凄く良くて、それでも点が取れなかったのは運が悪かったとしかいいようがないほど、このメンツで出来得ることはやりきれたように感じました。
続く鹿島戦にも敗れ8連敗となりましたが、メンツも踏まえると内容的には及第点以上といえ、それは加入したばかりの大崎の存在によるものが大きかったように感じました。
札幌は、攻守にバランスを考えているのがよく伝わってくる立ち居振る舞いで、それは加入後 初スタメンとなった大崎の存在が大きかったように感じましたかね。
鹿島の一列目の周辺でボールを受け、ビルドアップの出口の役割を果たしたり、自由なポジション取りで攻撃の起点となっている鈴木優磨を常に監視してそれを阻害したりと、大崎個人としての貢献も目立ちましたが、他の選手に指示を出しているシーンが多く、それにより全体のバランスがコントロールできているように感じた面の方が大きかったですかね。
この試合以降、大崎を中心とした守備面での手堅さが目立ち、それが反攻を支えることになります。
続く第23節で久しぶりに勝ち点を拾うと、第24節で今シーズン3勝目。
4点のリードを奪ってからの3失点は決して褒められた試合内容ではありませんが、攻撃力が持ち味だったチームの大量得点により、失った自信を取り戻すきっかけにしてくれればよいかなと。
この試合からの福岡、鳥栖、磐田と続く3連戦をすべて勝つことによって、奇跡の残留のスタートラインに立てると思っていた初戦は、後半アディショナルタイムに勝ち越しゴールを許すも、ラストプレーの劇的同点弾で辛うじて勝ち点1を拾う結果となりました。
後半アディショナルタイムに勝ち越されるというショッキングな結末を免れたのは、大卒ルーキー田中克の一振りでした。
土俵際で踏みとどまった北海道コンサドーレ札幌はここから3連勝。
もちろんそれだけではなく、強さ高さを兼ね備えた岡村を中央に置き、スピードのある高尾、パクミンギュが脇を固める3バックは試合を重ねるごとに安定感が出てきた印象で、2試合連続のクリーンシートも偶然ではないように思いますよ。
得点が取れるようになったことに加え、守備も安定し出してきたことが連勝を続けられている要因なのかなと感じます。
大崎加入後、彼を中心に整備された守備面は、高尾、岡村、パクミンギュの3バックにより安定感が出てきて、それにより戦績がついてくるようになりました。
■縮まらない差
3連勝で最下位を脱出したものの、その勢いは長く続かず。
次節がアウエー町田ということを踏まえると、ホームで何としても勝ち点3が欲しい一戦でしたが、J2からの昇格組ながら上位進出を窺える結果を残している東京ヴェルディに屈する結果となりました。
簡単な相手でないことはわかってはいましたが、圧倒的にボール支配するも相手の守備ブロックを崩せずに前半を終えます。
札幌は前半早い時間に、安定した守備と右サイドでの起点として3連勝の立役者の一人と言える高尾が負傷交代したことによりゲームプランが狂った印象で、ヴェルディの守備ブロックが強固だったことも踏まえても精彩を欠いたように感じました。
アクシデントも影響しましたが、待ち構える相手の守備ブロックを崩せずに無得点。
中盤までは同じぐらいの位置にいながらも、夏の補強大当たりで一気に残留争いから抜け出した好調京都相手には勝ちきりましたが、
続く第33節では、1点リードの後半アディショナルタイムにまさかの2失点で痛恨の逆転負け。
シーズン折り返し以降、これまでにないぐらい対戦相手の研究・対策をして試合に臨んできていることを窺わせ、それだけペトロヴィッチ監督も残留への最善を尽くしていることは伝わってくるのですが、そこに至るまでに落とした勝ち点の多さが重くのしかかりました。
■必然だった降格
第37節アウエー広島戦に向けて現地に向かっている機中で降格が決まりました。
中盤以降は盛り返しましたが、5連敗、8連敗と二度の大型連敗を喫し、22節までにわずか勝ち点11しか得られなかったことが重くのしかかった格好で、それはシーズン前のキャンプでの調整失敗により、例年と比較して主力クラスの移籍が多かったチームの再構築が遅れたことが大きく影響しました。
今シーズンだけに降格の要因をフォーカスするとこういうまとめ方になりますが、ペトロビッチ体制での課題に目を背け続けてきたことによる必然の降格だと私は思うのです。
ペトロビッチ体制での課題、いくつかあります。
一つ目は毎シーズン繰り返される怪我人の多さ
これは監督というより、クラブとしてのフィジカルケアの体制の問題だと思ってまして。
寒く、雪の多い地域に本拠地を定めていることで、他の地域のクラブよりも寒暖差の大きい環境に身を置いている札幌は、他のクラブよりもコンディション調整が難しいということを、シーズン初めや最終盤での怪我人の多さに実感させられています。
それに対して全くの無策ではないとは思うんですが、何年経っても改善されている感覚はなく、今シーズン中盤までは試合に出れる状態であれば調子の良し悪しに関係なくベンチ入りさせざるを得ない試合もあったほど怪我人が多い状態が続きました。
そして、その状態は選手層の薄さという二つ目の課題にリンクしていきます。
少数精鋭と言えば聞こえはいいですが、頭数が足りず、少しでも怪我人が出るとすぐにやり繰りが厳しくなり、層が薄いという表現の方がぴったりな近年の札幌。
加えてペトロヴィッチ監督が、メンバー固定を好んでいることで、主力が怪我で離脱して代わりに出て来る選手のクオリティが一気に落ちる状態で、これも選手層が薄く感じる要因になりました。
今シーズンは主力クラスの離脱が多く、代わりに出て来る選手も頑張っていることは窺わせるのですが、経験不足なのは明らかで...ほとんど使われてないんだからそりゃそうなるよね...
昨シーズン途中での金子移籍後から今シーズンも続いた得点力低下。
それにより、より際立つことになったザルともいえる軽い守備、これが三つ目の課題です。
守備練習をしないことで知られるペトロヴィッチ監督の下、7シーズン目となる札幌。
基本マンツーマンディフェンスなことで、それがしっかり機能し続ければゴール前に運ばれるシーンは少なくなるという想定ですが、それを破られた際の守り方は個人任せの部分が色濃く。
90分マンツーマンディフェンスを続けられるはずもなく、ゾーンでも守れるように整備できると地力強化にも繋がったんでしょうが、ペトロヴィッチ監督がそういうことをするとは思えず。
昨シーズン途中から、要だったマンツーマンディフェンスの強度を緩めたことが今シーズンの惨状にも繋がっており、これは四つ目の課題である長期政権の歪みによるものと私は考えていて、この四つ目の課題が今シーズンの結果に一番影響を与えたと思っています。
同じく長期政権だった鬼木監督率いる川崎フロンターレも、かつての強さが鳴りを潜め、中~下位に低迷したまま今シーズンを終えたことに見られるように、長い期間同じ監督の下で継続して結果を出すことは難しいのですよ。
札幌の場合で考えると、血の入れ替えが続かなかった、これに尽きますかね。
ペトロヴィッチ監督就任時に中堅クラスだった、宮澤、荒野、福森、深井、駒井がチームの土台を作りながら、金子、田中、高嶺、小柏といった若手がスタメンに定着したことでチームとしての厚みが出てきて安定期に入ったかに見えましたが、それに続く若手が伸びて来る前に彼らは他チームに活躍の場を求めて移籍していき、チームの屋台骨を背負ってきた宮澤などの中堅クラスはベテランの域に達し、怪我がちになりフル稼働できなくなってきました。
ペトロヴィッチ監督が使う選手の幅が限られることによる層の薄さがそれによりさらに際立つことになり、強度の高さが戦術の要となるマンツーマンディフェンスの強度をベテランに合わせて落とさざるを得ず、それが新加入選手のマンツーマンディフェンスに対する迷いにも繋がるという悪循環が今シーズン見られた現象で、それが中盤までの低迷に繋がって、中盤以降盛り返すもそこまでの負債が重くのしかかった降格という結果は、長期政権の歪みのよるものだと私は考え至りました。
ここ数年の課題から目を背け続けてきたことによる必然の降格ではあるんですが、夏の補強で前線の選手でもう一人ぐらい当たりを引いてくれていたらギリギリ残留できたかもしれないですね...とは思います。
当たったのは大崎、パクミンギュぐらいで、白井はそこそこ。
他の選手は正直...大はずれと言って差し支えないかと。
アジア圏外の外国籍で活躍してくれたのは日本ですでに実績残していたジェイ、アンデルソンロペスぐらいですよね近年では。
■ゼロからの出直し
2016シーズン以来、9年ぶりのJ2となる来シーズン。
ペトロヴィッチ監督は退任し、新たに監督を迎えることになりますが、その道はまさにゼロからの出直しと言える厳しい道だと思っています。
マンツーマンディフェンスという、個の力に大きく依存する戦術を採ってきた札幌はベースが脆弱で、個人的な意見としては"焼け野原"かと。
鹿島アントラーズサポーターでもある私は、新監督と噂されている方がどういう監督なのかはよく知っているつもりです。
一年でのJ1復帰をホンキで目指しているのであれば、もっと経験豊富なベテラン監督の招聘をするところでしょうが、ある意味札幌らしい人選かなとは感じます。
"一年でのJ1復帰"というワード自体、サポーターやスポンサー向けな面が強いですからね。
現状踏まえての正直ベースだと、来シーズンの目標は昇格プレーオフ進出かなと。
それもちょっと難しいかなと私は思います。
北海道コンサドーレ札幌の2024年ラストの投稿となります。
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